文・写真/ふじたのぶお
これまで試みたことさえ無い初めての取り組みに、やましろ商工会は東奔西走。ていねいな声かえによって十一軒の生産農家から賛同を得た。一方で商店街は現場の段取りを整える。普通の朝市とは異なる趣を、どのようにすれば事前に伝えることができるか。土のついた軽トラをアーケード街に並べて違和感はないか。通行客や商売の妨げにならいか。やってみなければ判らない課題ばかりが並んだ。おりしも時は十二月。作物が少ない真冬の開催に果たしてお客様が満足してくださるだろうか。
ほとんど手作りのPR道具を宛い、午前十時に幕を開けた。道行く人の表情をみると、まず「なんで軽トラがホコ天に停めてあるのか」と訝る様子があった。売り手である農家の人は掛け声も小さい。商売人が駆け寄り、威勢の良い声をかけると、少しずつ人だかりが生まれた。足を留めたお客様は野菜を手に取り、生産者と言葉を交わす。「親指ぐらいに切ってねえ、ちょっと醤油と塩をして二十分ぐらい煮るんよ」。調理法の伝授が始まっていた。
最初の開催では告知が弱かったが、それでも手応えを得るに充分な売上げが挙がっていた。続く翌月の第二回では噂が噂を呼び、たちまち商店街に人が溢れたのだった。いよいよ軽トラ新鮮組が動き出した。
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