文・写真/ふじたのぶお
地産地消をテーマにしてイベントを行うことは、地域活性化の端的なスキームで、人と物を組み合わせた催事は珍しくなく、もう一歩踏み込んだマッチングイベントを企画した。
岩国市には全国的に著名な蔵元があり、これらは地元の誰もが誇りに思う資源として捉えられている。商店街周辺には飲食店が多く存在することに注目し、商店街内外の有名な料亭を巻き込んで、オール岩国をコンセプトに「地もの食材を駅前の料亭が料理する。岩国5蔵の地酒をよせて、麻里布酒祭、千客万来!」と銘打ち麻里布酒祭を開催した。
まず5つの蔵元の説得から始まった。過去の軽トラ市の実績を従えて、商店街で岩国に思いを馳せて取り組むことをていねいに話し、協力を要請。実行プランに賛同を得るまで、およそ4ヶ月を費やした。
次に料亭。単なる屋台出店なら利害だけで話しは早いが、酒祭では、軽トラ市の食材を使った料理の提供を依頼する。物量や献立、価格設定、あるいは提供の方法など、各店はのれんを懸け、店の外でお客さまと対峙するだけあって、予想以上にシビアな準備が練り込まれた。必要な食材をリストアップし、「軽トラ新鮮組!」へ発注。流通システムを持っていないので、手分けをして所定の時間と場所へ納品する作業は困難を極めた。
一方で広報は、ポスターとチラシに加えて、インターネットのSNSを活用。オール岩国が楽しめるイベントとして市内外へ話題を投じる。これは大きな反響となって当日に繋がった。
2月下旬の日曜日。現場で早朝から仕込にかかる調理人と、続々と集う軽トラ。開会宣言を待たずに商店街には人が溢れかえり、午前10時には250メートルの商店街は端から端まで3千人以上の人で埋め尽くされた。「商店街も捨てたもんじゃないねえ」と、雑踏の中で誰かの言葉が聞こえたとき、イベントの成功を知った。
参加することで料亭は宣伝効果が得られる。軽トラ市では品物が売れ、名前が売れる。商店街では賑わいが得られる。来街者は岩国の食と酒が満喫できる。かかわった全ての人にウィン・ウィンの関係が成立する。
人と物を覚醒させるのは「事」。仕掛け一つで、まだまだ道はある。
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