文・写真/ふじたのぶお
多くの地方都市にある商店街がそうであるように、岩国市の中通り商店街も、道路網の発達や大型店の出店、それに対抗する魅力やスケールを持つことができず、衰退の道を余儀なくされた。少子高齢化社会となり、再び公共交通機関を利用する人が増えると、周辺の好立地にはマンションが建ち並び、住み替えによる人口増加がみられるようになった。商店街は、地域を繋ぐコミュニティとしての性格を要求される時代になった。
山口県岩国市は平成18年の合併によって、周辺の8市町村が一体化。県下2番目の面積を持つ広域市。人口約14万人。広島市内から電車で50分の位置にある。
それまでの商店街活性化事業は、若く行動的な商店主が主役となって実施できたが、現在では後継者難にも現れているように、商店街内部で運営することが困難になった。そこで広域合併をした岩国市を眺め、広大な里山があることに着目。軽トラ市の実践によって、売り買いの場、またコミュニティの場としての意義を両立させるマッチングイベントを行い、現代の地方都市商店街に相応しい元気再生を目指した。
しかし、身の丈に見合う事業規模でなくては継続できない。軽トラ市は、農家の大半が暮らしの中で使っている軽トラックに農業生産物を積載して商店街へ運ぶ。荷台のアオリを落とすだけで販売台になる。ほとんど運営コストがかからない端的なスモールスタートを実践するもので、岩手県雫石に前例があった。
これを岩国流にアレンジし、アーケード通りの空き店舗前に並べることで賑わいが生み出せる。雨天の催行も可能で、商店街の照明や放送など既存設備も活用できる。企画のポイントは、商店街外部のマンパワーと生活文化をいかに巧みに配置し、賑わいを生み出すか。里山の新鮮食材を軽トラに乗せ、商店街で販売することでコミュニティを形成する「軽トラ新鮮組!」の計画は、こうして誕生した。
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