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平成22年度商店街実践活動事業(事業報告書・抜粋)

軽トラ新鮮組!「ネオ」
昨年度に組成した軽トラ新鮮組事業の次世代へ向けた発展的な取り組み


事業の概要
  軽トラ市の慣習を根付かせるための21年度は、簡素でコストの掛からない運営方法の模索を行った。
  平成22年度の「軽トラ新鮮組!ネオ」は昨年来の実績を礎にして、新たな試みによって街と里山における人・物・事の交流を更に深め、岩国独自の軽トラ市を定着、発展させることを狙いとして取り組んだ。
  具体的には既存イベントとの合同開催、里山へ訪れ地産地消と食育を体験する企画、さらには里山から食材だけでなく郷土の食文化を現在の街へ融合させる具現的な事業を展開した。またメディアとの信頼関係を築き、より効果的な宣伝を実現し、実績を広く衆知させることを目指した。

▼7月開催

  既存催事「土曜夜市」との合同開催に取り組む。近年「駅前でウカイ!」を目玉イベントにしている夜市は、地域間交流を実現していることから集客力が大きく、行政やメディアの注目度も高かった。これに「新鮮組!ネオ」を合同することで、それまでに顧客化していたお客様以外の人々へアプローチする事が狙い。ただしスペース的な都合、また夜間開催の時間帯に関する制約が伴う企画だった。
  しかし実際に開催してみると多数の軽トラが出展。その殆どが完売の盛会となった。
  当節は、KRY山口放送「熱血テレビ」から取材要望があり、準備のプロセスからカメラが密着した。当初は商店街の取り組みを紹介する程度だったが、番組編成において高い評価をされ異例の18分枠で放映され、大きな反響を呼んだ。

▼8月開催

  当節は定期第三日曜日と盆休みが接近し、帰省家族が多い里山の環境と、夏の収穫時期を過ぎたタイミングが重なるため、実行委員会では予め休催を取り決めた。
▼9月開催

  全国的な猛暑被害がやましろ地域にも大きな影響を与えた。不作は収穫だけでなく作付けにまで及び、軽トラ市の開催は中止を余儀なくされた。
  急遽の中止は実行委員会から「地元の作物だからこそ猛暑の影響でやむなき」とメディアへ発表。「新鮮組!ネオ」が本当に地産地消を実践している事を消費者へ印象づけることに成功した。

▼ちびっこ新鮮組(9月)

  里山から街へ、街から里山へ。双方向へ行き交ってこそ交流と考えた初の実践的な取り組み。本事業は地元ケーブルテレビ「アイキャン」へ企画段階か予め参画を促す。募集広告と特別番組制作を含み、かつ第三セクタによって運営される錦川鉄道(株)の錦川清流線およびとことこトレインを活用する、オール地元参画型の企画を実施した。
  親子17名が錦川清流線へ乗車し、椋野駅から本郷町の山村留学センターへ。道中はやましろ地域の歴史や風土、文化を紹介するボランティアに同伴してもらい、参加者が里山の背景を理解する機会をつくる。山村留学センターでは、当地の子どもたちと農地の散策、昼食の手作り、神楽による交流を深める。帰路は、とことこトレインへ乗車し、やましろの風景から野菜や食材が生み出される地域全体を体感する。
  当初の人数不足に対する懸念を突破し、実際にツアーへ同行してみると、参加者は「やましろ地域」の風景や風土に触れることで確かな信頼感を抱くなど、予想以上の大きな心理的効果があった。
  アイキャンの番組は後に50回以上が放映されるなど、参加者以外の視聴者にも広く衆知させることができた。アイキャンとのタイアップは今後も有効に活用していく価値がある。

▼10月開催

  当節は岩国駅前で開催される一大行事「岩国祭」との合同開催を行った。数万人規模の来場者がある催事には、新たな新鮮組メンバーが参戦。やましろ地域が推進する中山間地域連携事業の一環を加え、北広島町など県外の物産・観光PRを行った。従来の新鮮組メンバーに交わり、多数の来街者に囲まれ最大限のPR効果と全店舗完売の大きな実績を挙げた。

▼11月開催

  イベント併催を伴わない通常開催。お客様の定着度を図る目的で、新聞折り込み広告などを行わず、近隣エリアのポスティングと商店街の吊り広告だけによる実施を試みる。
  やはりイベント併催時より集客力は弱いが、安定的に集まる人の数は増加。各軽トラ出展者の売り上げも増加傾向にある事が判った。秋野菜は不作だったが、それでも産品の売り上げが底上げになっていることが読み取れた。

▼12月開催

  かねてより目論んでいた他地域との協働を実践する。やましろ地域には「勘場猪鍋」と呼ぶ伝統的な大鍋料理があり「やましろ五龍鍋」と称する大鍋部隊が既存する。猪鍋は来街者増加の効果的なイベント商材となっている実績がある。中通り商店街では「秋の収穫祭」と題する秋期の食イベントへの取り組みを計画していた事もあり、当節の新鮮組は「鍋まつり」として実施する。
  山口県下、防府市の「天神町銀座商店街」では近年「鍋−1グランプリ」という大イベントを成功させていた。これに習い、岩国でも将来の「鍋−1」開催を目指す意義も併せて、「天神町銀座商店街」との協働を行う。
  先様の著名な鍋料理「わっしょい力鍋」を旗艦に、猪鍋、中通り商店街のカキ雑炊、また岩国で展開されているご当地カレー「岩国海軍飛行艇カレー」の鍋版など全5種を取り揃え、軽トラ新鮮組「鍋まつり」として開催した。
  歳末の商店街売り出しと相俟って、大きな集客効果を得て、多くのブースで完売が続出。軽トラ出展者の売り上げも大きく伸ばした。ただし鍋料理には多数のスタッフが必要であり、簡素な仕組みで継続的に実践するという目標からは遠ざかってしまう。

▼1月開催

  記録的な大寒波が襲来した第三日曜日に重なった。やましろの出展者が在住する錦町などでは氷点下10度の新記録を経験するなど、悪天候に苛まれた開催となった。当初14台の予定で進めていたが、豪雪で軽トラが動かせず急遽の欠員申し入れが相次ぎ、10台ほどで実施。
  日中の気温も5度以下となり、客足は極めて鈍い。結果的に成績は惨敗。実行委員会として申し訳なく思っていたところ、出展者は異口同音に「こんな事もある。来月頑張ろう」と逆に励まされる始末。いみじくも出展者の意欲は確実に大きく確かなものになっている事を知った。

▼2月開催

  当節は平成22年度商店街実践活動事業の対象事業としては最終回。当初最大の目的としていた、里山から人・物・事を運び込み、駅前商店街で街人との交流を図るため、「ママでも出来ちゃう、お手軽やましろ家庭料理実演講習会」を併設した。やましろの食材を運んで売るだけではなく、その食材の試食と調理法を実演提供する事で、やましろの人、風土、文化と来街者の直接交流を実践するもの。
  駅前の商店街立地で開催するイベントである事から、本格的な講習会スタイルではなく、立ち読み程度のアクションで体感できる気軽さを狙った。同時にやましろに伝わる神楽の舞い、岩国に根差す篠笛バンドの生演奏などを加え、集客と環境づくりを行った。
  結果的には土曜夜市相当の瞬間風速を記録する大勢の人出に一時、実演会場は二重、三重の人だかりとなり、事故の危険性まで察知する大反響となった。やましろの食材+調理法+人の合作は、予想を遙かに超える相乗効果がある。
  また当節の新鮮組は、KRY山口放送「熱血テレビ」が二度めの密着取材を行った。前段の事業着手時期から一年(実質的には8ヶ月)の実施を経て、その成長度や変遷に番組の放送意義を求めたもの。同一番組が二度の取材を行うケースは非常に珍しい。中央のテレビ局(日本テレビ)もアンテナを建てているという。放映は3月10日の予定。

▼総括
  8ヶ月間の「軽トラ新鮮組!ネオ」は、事業計画を立てた時点で企てた全てのプロセスを完了した。

1)継続運営のための振り子に勢いを付ける目的は各種のイベントと同時開催する事で達成できたが、根本的には出展者のモチベーションが継続運営を左右する。そのために商店街側の実行委員会は綿密な信頼関係を築くためのダイナミックな行動をとり、果敢に足を運んでネゴシエーションを行うことが重要。

2)天候に左右されやすいという、地産地消ならではの脆弱性も露呈した。結果的に意欲を盛り上げる事に結びついたが、これが度重なるとリスクが高い。作柄が悪い時期の集客、売り上げを補う商店街サイドの仕掛け創りは課題として残さなければならない。

3)交流。駅前エリアを中心として点在する周辺地域から人、物、事を運び込み、街で交わりの機会を創出するのは最も端的な街づくりの手法である。交通インフラが拡充する現代にあって、商店街はサブカルチャーを生み出すコミュニティとして機能させる試みは、総じて大きな実績と効果を挙げたといって良いだろう。とりわけ最終回となった2月開催においては、これほど多くの街人が興味を示すとは想定しておらず、早急に継続的な実施のための仕組み作りに着手する必要性を感じた。

4)次年度。現時点では大きな財源の目処は立っていないが、継続運営の基礎は充分に構築する事ができた。今後はゆるやかな上昇カーブを念頭におき、来街者増加と同時に、軽トラ市への新メンバーの参画を促す仕組み作りが必要。新鮮組メンバーの新陳代謝は、すなわち新たな顧客創出に繋がり、同時に継続運営の根本的な運営基盤になる。

5)メディア。地元メディア各社への積極的なアプローチは大きな役割を果たした。疲弊した商店街の再興策としての視点は、やがて交流による街づくりの視点へと移行し、里山再生にも繋がる副次的な効果を生み出している。里山と街場の双方が持つ「資産」を、本事業が介在することで「強み」に変え、ブレないコンセプトで息長く続けることは、翻ってみれば地元メディアが最も願っている事かも知れない。

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